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ノーベル賞の賞金に税金はかかるのか

 受賞の発表がある度に話題となるノーベル賞。ノーベル賞は【物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学】の6つの分野があり、その分野で大きな功績を残した人物に対して、賞状、メダル、賞金が授与されています。では、この名誉あるノーベル賞を受賞した場合に受け取る賞金は課税の対象となってしまうのでしょうか?今回は≪ノーベル賞の賞金に税金はかかるのか≫というテーマで取り上げます。

1.そもそもノーベル賞ってどんな賞?

元々ノーベル賞とはアルフレッド・ノーベルというスウェーデンの発明家の遺言により始まった世界的な賞です。ダイナマイトを発明して富を築いたノーベルは、危険な兵器を造り出した人間として一部の民衆から批判を受けてしまいます。彼は自身が死んでしまった後、周囲から自分がどのような評価を受けるのだろうと恐れてしまうようになりました。そこで彼は発明家として手にした多額の財産を『人類の為に貢献した人々へ授与していってほしい』という遺言を遺し、自身の名誉を守ろうとしたのです。この遺言がきっかけとなり、彼の死後ノーベル財団が結成されノーベル賞が設立されることとなりました。

2.6分野=5分野+1分野

 冒頭で述べた通りノーベル賞には6つの分野があります。しかしこのうちの一つ『経済学賞』について、経済学賞は正確には「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」という名称であり、実はノーベル財団はノーベル賞と認めていません。そのため経済学賞以外の5つの分野については、ノーベルが残した遺産を遺言通り、ノーベル財団が運用しそこから得た利益を基にノーベル基金から賞金が与えられているのですが、ノーベル財団により認められていない経済学賞の賞金は、「スウェーデン国立銀行賞」というその名の通りスウェーデン国立銀行の基金から支払われているのです。実はこの『賞金の支払元がどこか』という事が当コラムのテーマ『ノーベル賞の賞金に税金はかかるのか』に大きく関わってきます。

3.課税かどうかは賞金の支払元により異なる

ノーベル賞の賞金が課税となるかどうかは所得税法で定められており、所得税法第9条1項十三号ホでは「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」は非課税とされています。先述の通り「物理学、化学、生理学・医学、文学、平和」の5つの分野はノーベル基金から、「経済学賞」においてはスウェーデン国立銀行から賞金が支払われています。以上の事から経済学賞以外の5つの分野における賞金については原則として非課税となり税金はかかりません。一方、経済学賞に関しては支払元がスウェーデン国立銀行となりノーベル基金からの支払いではありませんので税金がかかってしまうということになります。

4.経済学賞の賞金は一時所得

ノーベル賞の6分野の内、唯一ノーベル基金以外から賞金が支払われている経済学賞は「一時所得」として所得税が課税されることになります。所得税は「累進課税制度」という制度を設けており、課税の対象となる所得金額が増加していくにつれて税率も上がっていく制度です。仮に経済学賞を受賞した場合には、その賞金額の大きさから考えて累進課税制度における最大税率である45%がその賞金額に適用される可能性があります。しかしながら現時点では経済学賞を受賞した日本人は一人もおらず実際に所得税を課税された方はいません。栄誉あるノーベル賞受賞に伴う賞金授与なのですから、今後日本で受賞者が出た場合には非課税となるように税制改正が行われるかもしれません。

5.まとめ

・ノーベル賞の経済学賞分野の賞金は「スウェーデン国立銀行」から支払われ、 その他5つの分野の賞金は「ノーベル基金」から支払われる

・所得税法では「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」は非課税となり、税金はかからない

・スウェーデン国立銀行から支払われる経済学賞の賞金は課税対象となり、 一時所得として所得税の対象となる

  

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