給与所得控除について

今年も残すところ約一か月となり、年末調整の季節となりました。
会社にお勤めの方は、「扶養控除申告書」などの書類を会社に提出されたと思います。
しかし、実は年末調整って具体的に何をしているかわからない・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
せっかくですから、書類から一歩踏み込んで、「年末調整」について少し詳しくなってみましょう。
今回は、税金を計算するうえで重要となる控除の中でも多くの方に影響する、『給与所得控除』について説明していきます。知っているようで知らない、給与所得控除とはどういうものでしょうか?
1. 「給与所得」とは、「年収」ではない?
さて、「給与所得控除」について知る前に、そもそも給与所得とは何の金額のことでしょうか?
勘違いしやすい点ですが、世間一般で言われる「年収(=給与収入)」と、「給与所得」は別物です。
・給与収入 ・・・ 会社から一年(1月~12月)のうちに支払われた給与、賞与の合計額
・給与所得 ・・・ 給与収入から「給与所得控除」を差し引いた金額
年末調整は「給与を支払う人(会社・団体)」が行うものなので、対象者である皆さんは「給与収入」を得ています。
その給与収入から、「給与所得控除」を差し引いて求められる金額が、「給与所得」なのです。
ここで、「給与所得控除」が登場しました。後ほど、給与所得控除の算出方法をお伝えいたしますので、まずは基となる「給与収入」を計算してみましょう。
例えば、1月~12月の間に、給与400万円、賞与100万円を受け取ったとします。
単純に二つを足して、この年の給与収入は500万円ですね。
皆さまが良く言う「年収」に値します。
・給与収入 : (給与)400万円+(賞与)100万円=500万円
では続いて、「給与所得控除」の算出方法を解説します。
2. 給与所得控除を計算する
給与所得控除は、いわゆる必要経費のようなものをイメージしてください。
自営業者の場合、一年間の収入(売上)から実際に使った経費を引いて所得を計算します。
会社に勤めていても、仕事に使う文房具類を自分で購入したり、スーツや鞄は自前で揃えたりする必要がありますよね。
それなのに一切経費がないのは不公平だ!ということで、「給与所得控除」という形をとって経費が認められています。
給与所得控除は下記の式で計算します。
給与収入 × 給与所得控除割合 + 控除額 = 給与所得控除
給与所得控除割合と控除額は、給与等の収入額に応じて下記の表のとおりに算出されます。
表1:給与所得控除の速算表(令和7年分以降)
| 給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 | |
|---|---|---|
| 1,900,000円まで | 650,000円 | |
| 1,900,001円から | 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
| 3,600,001円から | 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
| 6,600,001円から | 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) | |
(注)同一年分の給与所得の源泉徴収票が2枚以上ある場合には、それらの支払金額の合計額により上記の表を適用してください。
(注)令和7年12月1日に施行され、令和7年分から適用される金額です。
参考:No.1410 給与所得控除|国税庁 (nta.go.jp)
それでは先程の例を使って給与所得控除と所得金額を計算してみましょう。速算表(表1)をご覧ください。給与収入500万円なので、給与収入額欄の360万円超~660万円以下をみます。
給与所得控除割合が20%、控除額は44万円ですね。
式に当てはめると…
(給与収入) 500万円 × (給与所得控除割合) 20% + (控除額 ) 44万円 = (給与所得控除) 144万円
給与収入から給与所得控除を差し引くと給与所得金額が求められるので、
(給与収入) 500万 – (給与所得控除) 144万円 = (給与所得) 356万円
年収500万円から控除額144万円を差し引いて、給与所得は356万円になりました。
ちなみに、給与収入が850万円を超えた場合の給与所得控除は、一律195万円の固定額となっているのでご注意ください。
他にも、配偶者控除、特別配偶者控除、各種保険料控除など、それぞれの家庭事情によって各種控除が差し引かれて一年間の所得税が確定します。
これから年末調整を行う前に、まずは「給与所得控除」と「給与所得」について押さえておきましょう。
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