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もうすぐ始まる“後払い免税”制度!リファンド方式でインバウンド対応はここまで変わる!

令和7年度税制改正により、令和8年11月から「リファンド方式」という新しい消費税免税制度が導入されます。

対象となるのは、日本国内で商品を販売する免税店や観光地の小売業者など、外国人旅行者向け事業者です。制度導入は不正防止の強化と事務の効率化が目的ですが、販売時の価格表示や返金処理など実務に与える影響は小さくありません。

■ リファンド方式とは?

「リファンド方式」は、外国人旅行者が免税対象商品を一旦消費税込みで購入し、出国時に税関での確認を経て消費税相当額が返金される制度です。

現行制度との比較

現行免税制度 リファンド方式(新制度)
購入時の価格 消費税抜き 消費税込み(後で返金)
販売処理 免税売上 課税売上 ⇒ 返金確定後に免税へ振替
消費税の支払 購入時に免除 一時支払い ⇒ 出国時に返金

■ 対象となる事業者と影響

主な対象者

  • 免税店(百貨店・家電量販店・ドラッグストア等)
  • 観光地の小売業(土産物店・アウトレット等)

想定される影響

  1. 免税店での販売価格が「税込み」となる
  2. 売上側の会計処理が「課税売上 ⇒ 免税売上への振替
  3. 返金手続き(リファンド)業務の追加

■ 実務例:免税店での対応ステップ

販売時

  • 顧客に「税込価格」で販売
  • 会計処理は通常の「課税売上
  • 国税庁に「購入記録情報」を提供

出国時

  • 税関での確認後、物品の持ち出し情報が店舗へ通知

会計処理

  • 課税売上」を「免税売上」に振替

返金

  • 顧客に消費税相当額を返金
    (免税店と契約した特定の事業者に委任されることが一般的になると想定されます)

振替処理の例

【リファンド方式の振替例①】
税関情報の取得都度振替を行う。
【リファンド方式の振替例②】
税関情報の取得後、一定期間(例えば月次など)まとめて振替を行う。
【リファンド方式の振替例③】
税関情報の取得時期による、いわゆる期ずれ(消費税の集計期間と返金機関にずれ)が起こった場合、「仮受消費税」と「未払金」を用いて振替処理を行う。

■ リファンド方式が採用された背景

余談ではありますが、この制度が採用された背景を簡単に説明したいと思います。

まず、現行の免税販売では、

  • 免税購入対象者に対して「税抜金額」で販売
  • 出国時の税関検査でその物品の持ち出しを確認できない場合に消費税額相当額を徴収する

といった仕組みをとっています。

この方式は、税抜金額で購入したものを日本国内において税込金額で転売し消費税額分の利益を得るという不正を防ぐことができないという欠点があります。金額の制限や特殊包装の強制により対策を行ってきましたが、この度抜本的な制度改正を行うこととなりました。

■ まとめ

リファンド方式は、免税制度の透明化と不正防止という国の方針に沿った改正ですが、出国時の税関検査により情報提供される税関確認情報を受け取るためのシステム改変や、返金処理を委託する場合のフローの構築や手数料など、免税事業者にとって負担となるような大きな影響があります。


個人的には、免税事業者の負担が大き過ぎるように感じました。

返金方法にしても、現金での返金や事業者が独自で返金することは難しいだろうし、もし返金処理を委託した場合でも手数料がいくらかによって小売店には死活問題になるかもしれない(キャッシュレス決済の手数料と二重で取られたりしたら・・・)。さらに、国税庁のシステムと情報共有するためのシステム導入費など(補助金などが適用されるのかもしれないが)、新制度対応のための費用負担もどれくらいになるのか。

不正はあってはならないことだけれど・・・。

ちなみに、指定口座が間違っているなど、免税対象者側の事情により返金できなかった場合は「雑益(不課税)」で処理して良いとのこと。処理的には明確であっても、後々、顧客とトラブルにならないように事前のアナウンスなどが必要であり、費用以外のオペレーション準備も重要です。


税理士事務所としては、会計作業の煩雑さが事業所(結局は顧問税理士?)に委ねられているように感じてしまいました。実際に稼働してみないとわからない部分も大きいのですが、対象となる免税事業者は会計処理について事前に顧問税理士に相談しておくことをおすすめします。

令和8年(2026年)11月の施行までに、業務フローの見直し・返金処理体制の整備・システム対応をしっかり行っておくことが、インバウンド需要を取り込むための鍵となります。

詳細: 輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し|国税庁


この記事を書いたのは

新経営サービス清水税理士法人

個人創業以来65年以上の歴史を持つ地域密着型の税理士事務所。医療福祉や相続・承継などの専門特化した部門を有し、多角的な知識と経験を有する税理士が多数在籍。 中小企業の経営者様に寄り添った税務サービスを提供するべく情報発信している。

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